捧げましょうこの花を。
今日と言う日に捧げましょう。
献花
全てが終わった、あの時から。
毎年たった一日、この場所を訪れる。
その日は全ての予定がキャンセルされ、事件の依頼もショーの斡旋もこの日だけは絶対断られる。
「今年も晴れてよかったね」
「ああ」
「そうね」
森の中の一本道を歩きながら。
三人は静かに言葉を交わす。
それぞれの手には花束。
新一は白い薔薇。
快斗は赤いチューリップ。
志保はオレンジのガーベラ。
一種類の花で作られた花束。
それを三人は大事に大事に持っている。
ゆっくりと歩いて行って着いた場所には、白い石がぽつんとあった。
森の中にある小さな広場。
そこに白い何の飾り気も無い四角い石が建っている。
それは墓標。
銘のない墓標。
銘はそれぞれの心の中にある。
『江戸川コナン』
『怪盗KID』
『灰原哀』
全てが終わっていなくなった人物。
だけれど、それもまた存在していた者だから。
愛しい者達だから。
だから、今日と言う日に花を捧げましょう。
4月1日。
嘘が許される日。
「そういや、初めてここに来たときは無理やりだったな」
白い薔薇を手向けながら、新一が苦笑しながら言った。
それは真っ白な怪盗への献花。
「そうよね。いきなりだったわよね」
オレンジのガーベラを手向けながら、志保が面白そうに同意する。
それは小さな科学者への献花。
「だから〜、あの時はごめんって言ったじゃない」
赤いチューリップを手向けながら、快斗が情けない顔で答える。
それは小さな名探偵への献花。
それぞれが花を手向ける。
自分達は元の姿に戻っただけだけど、確かに彼・彼女は存在していたから。
殺したようなものだから。
偽善かもしれない、自己満足かもしれない。
けれど、あの時居た存在があったから今の自分がある。
それを忘れてはいけない。
そんな感情を、快斗は優しく汲み取って。
この場所を用意した。
花を手向けた後は、ピクニックシートを広げてそれぞれのんびりした時間を過ごす。
快斗の用意したお弁当を広げながら、ゆっくり物思いにふける。
シートの上に用意されたお茶は………………6人分。
|
花を手向けているシーンが書きたかっただけ
ちなみに関係ないけど、この森の所有者は快斗だったりする
|